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りなかなほも

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大人になった時、里奈は僕を思い出すかな。
高校時代にぽつりと言われた言葉を里奈は時々思い出す。
大人になったわけでも、言った本人が遠くに行ったわけでもない。
駅のホームでひとり、ベンチに腰かけて、里奈は足をぶらぶらさせながら、
改札を抜けるカップルを眺めていた。
カップルを見ると最近はすぐに香菜が浮かんでくるようになっていた。
さっきの言葉は香菜の言葉だ。香菜には最近彼女ができた。
彼女がいる男友達なんてたくさんいる。自分もそうだし、街にも溢れている。
香菜に彼女ができることも当然ふつうのことである、と、
里奈は自分を納得させようと何度も試みているが、うまくいった試しはない。
自分の中のもう一人の自分、おそらくは高校時代の自分が、だって香菜は、といつも反論する。

3年程前、里奈と香菜は身体を重ねた。

香菜は実家の大阪から離れ、一人でアパートに暮らしていた。
里奈はよく香菜の家に遊びに行っては泊まっていた。
もちろん、普通の友人として接していたし、普通の友人として泊まっていた。
その日もいつものように香菜の家でテレビを見ながら他愛もない話をして、
いつものように寝ようということになった。
里奈は、大学生になってこのころのことを考えると、なんて健全なのだろうと思う。
はしゃいで夜更かしをしたのなんて最初の何回かであり、その後は夜になるとちゃんと眠っていた。
電気を消して敷かれた客用布団に潜り込むと、香菜が突入してくる。
お腹のあたりくすぐられたりして、やめろなんて笑いあった。
香菜は夜が苦手だった。
ひとりで寝るのは寂しいとよく漏らしていた。
そのせいか変な噂をささやかれていた。
里奈は疑わしいことも目にしている。
たとえばおそらく相手と思われる人からのなんともいえない視線を受けたり、香菜の頬が上気しているところを見たり。
それでいて里奈は判断を放棄していた。
香菜は香菜だ。
そうやって目の前の彼を受け入れていた。
何が悪かったのだろう。
何がきっかけだったのだろう。
里奈にはわからないが、香菜には何か、その日特別なことがあったのかもしれない。
だから少し違う道を、二人は進んでしまった。
里奈をくすぐった後に香菜は里奈を抱きしめた。
一瞬静寂があり、里奈が違和感を覚える前に、香菜は里奈の上に乗る。
里奈は、飼っているペットのようだと少し思った。
寝転がっていると上に乗ってじゃれてくる。
異なる点といえば、目。
暗い世界、目が慣れるまでに時間がかかる、それでも香菜の目によく研いだ刃物みたいな光を感じる。
現場は認識まで。理解はできない。
情報が足りない。いや足りている。
読み損なってしまっただけだった。
里奈の頭の中はエラーを起こしていて、だから香菜の口が動いたのはわかったけれど、何を言ったのか読み取ることはできなかった。
華奢な香菜からは信じられないような力と素早さで里奈のズボンと下着が脱がされる。
抵抗して動いたものの手伝っただけになってしまった。
半分だけ脱がされたせいで大事な部分が現れ、足は暴れられないように固定されている。
十分とは言えない隙間に香菜は頭をねじ込み、足を押さえつけて、咥えた。
里奈は、殴ろうと思えば殴れたものの、友達を殴るなんてできない。
戸惑っているうちに抵抗する機会も失ってしまった。
暗闇の中に水の音と、慣れない感触が点在して、なぜか背筋のあたりがざわざわする。
手で顔を覆っていた。
何がどうなってんだ。理解はできても受け入れられない現実を目の当たりにする気力はなかった。
自身の変化に伴って香菜の動きは変わっていった。
慣れない刺激と、手慣れた香菜の動きに、心と体は分離して、里奈はあっけなく果てた。

里奈がぼんやりとしている間にも香菜は手を休めない。
もはや無抵抗で刺激を受け入れると再び硬度を取り戻し、目も暗闇に慣れてきていた。
香菜は何か準備しており、それが何かわかって
いながら里奈は動こうとしなかった。
それは越えてはいけない一線でも、もういいのだと、諦めていた。
香菜が上に乗ってコトは始まる。
どんな風に動いているか見える感じる。
長めの前髪が顔を隠している。
白い肌が上下する。暗くても動いていてもそれが綺麗なのはわかったし、頬の皮膚の感じを考えれば見なくてもわかる。
女の子との差異は感じていたけれどどうでもよいことだと思った。
香菜が、声を噛み殺していたから。
香菜は香菜なのだから、声を出したって里奈は大きく変わりはしない。
気を遣っている。気の遣い方を心得ているほうが、少しショックだ。
そんな気持ちとはうらはらに動いているから乱れているのではない呼吸に、里奈はくらくらする。
冷静な部分で香菜を見て、理性の崩壊した部分が反応する。
触りたい気持ちを抑えてただ香菜が揺れるのを見ていた。
香菜の動きが大きくなり、里奈は抑えきれなくなった。
そうして二人はほぼ同時に果てた。


崩れた関係のまま、里奈は相変わらず友達として香菜の家に泊まり、友達でない営みを行った。
だからといって学校では何も変わらない。
ふたりで遊ぶ回数が増えたわけでもない。
香菜の噂は相変わらずであった。
そうしてあっという間に受験を迎えた。
香菜と里奈の学力はそこそこに異なっていて、お互いが進路を縛るようなこともなかった。
だからいま、同じ県内の別の大学に通っている。
以前より会う回数は減った、とはいえ、月に3、4回は遊ぶ仲である。
今日もこうして駅のホームにいるのは、待ち合わせに遅れてくる香菜を待っているためである。

香菜はサークルに入った、バイトもしている。
里奈はアルバイトと、時々は学科の友人と遊んだり、飲みに行っている。
違う環境にいれば知らないことも増えた。
2年生になって、いつものように香菜とただぶらぶらしていると、急に、香菜が言った。

「彼女できた。」

里奈は、咄嗟におめでとう、と答えた。
後で考えるとファインプレイだった。
それから、少し照れた香菜に、きもっ、と投げた。
香菜が反論するのも、里奈は話半分に流す。というよりか、それ以上の反応ができなかった。
香菜の隣に知らない女の子を勝手に浮かべて、言葉がなくなりそうになる自分を飲み込んで、あれこれ聞いてみた。
同じサークルの後輩、歌がうまいんだ、向こうから告白された、エトセトラエトセトラ。
良い映画に出会った時みたいに香菜はよく喋った。
寂しいと嘆いていたあの日の影が薄れていくことに、里奈は素直に喜んで、同時に少し寂しくなる。
悲しいわけではなかった。ただ、やっぱり寂しかった。


何度目のことだろう、最初よりはより自然なかたちで行為をするようになった頃、香菜はベランダのカーテンを少し開けて月の光を浴びていた。
冷えるよ、と里奈がタオルをかけると、ふいに香菜は、大人になった時、里奈は僕を思い出すかな、と呟いた。
ぽつんと宙に浮いたような台詞だったけれど、それがいつも考えていることなのだと里奈はすぐわかったし、
おそらく正解と思われる答えもすぐに浮かんだ。
だけど、それが二人の関係に対しては正解でないこともすぐに察して、わざとふざけたように、何言ってんだよ、と笑った。
「大人になっても変わんないよ。」
香菜は、なんだか難しい顔になる。
「そうかな。」
「そうだよ。」
香菜は、肩のタオルが落ちそうな勢いで里奈に飛び込む。
大人になっても友達でいて、みたいな、そんなことを言った、ような気がする。
そこにはもうふざけた空気が混じっていたから、里奈は安心してきもいきもいと香菜を押しやった。
嘘じゃない。きっと、同じような距離感でいるんだろう。
こうやって肌を重ねていることだけが二人の関係の異物なのだ。
香菜が里奈に好きということはなかった。
里奈が香菜に好きということもなかった。
お互い、恋愛関係ではないのだ。

香菜が寂しいのも、こうして満たされないのも、里奈がどうにかできる問題ではない。
香菜は、わかっているのだろうか。おそらく気づいている。
だから矛先が自分に向いているのを、里奈は知っている。



ベンチで自分の靴を眺める。
気に入って買った靴だ。結構高かった。
よく見るとちょっと汚れているから家に帰ったらおとさなければ。
里奈がそんなことを考えていると
運動神経の悪そうな足音が迫ってくる。
「ごめん、遅くなった。」
運動による呼吸の乱れはこういう感じ、そうそう。
「おせーよ。」
笑って言うと香菜もへらりと笑う。
「出る直前になってお腹痛くなっちゃって。」
「牛乳?」
「そう!あたり!なんでわかったの?」
「前もあったよね。」
「あったあった。」
もう、忘れてよ、と苦笑いするうちに電車が到着する。
どこに行くかも決めずにとりあえず乗り込む。都心にむかえば間違いがない。
「夏休み実家帰るの?」
「帰る。里奈もくる?」
「なんでだよ。」
「里奈君こないのって催促されてるんだけど。」
「ほんと?」
「ほんとほんと。待ちわびてるよ。」
「じゃあお邪魔しようかな。」
「ついでにたけにも会おう。」
たけ、というのは高校の頃里奈と香菜とつるんでいた竹内朱莉のことだ。
だいたいいつも3人でいたが、朱莉だけは野球部で忙しかった。
朱莉は高校卒業後、急に大阪に行くとして飛び出していった。
里奈と香菜でたこやきが地元戻るのかよとからかったことがある。
丸っこくて小さくて、明るくて女子に人気であったが、本命の彼女に夢中で他の女子には目もくれなかった。
たけ、元気かな。元気でしょゼッタイ。
ふと会話が途切れた瞬間、香菜は電車の外を見ながらぼんやりとしていて、
里奈はその目の上で移り変わる外の景色を見ていた。

香菜、たけのこと好きだったよね。
電車と同じ速度で流れる景色に、言えない言葉を流した。



正直言うなら、もしかして俺のことを好きなのかと思った。
違うとわかっていながら万が一の可能性のことをいつも考えていた。
香菜の記憶の中に一番にいるのは俺じゃない。
だから、もしかして大人になって俺を忘れるのは香菜のほうかもしれない。
俺の方から忘れることって、色々衝撃的すぎて無理だけど、
そんなことはうっかり言えば喜びそうだし、謝ってもきそうだから、言ってやらない。

「里奈?」
「ぼーっとしてた。」
「起きてる?」
「起きとるわ。」
里奈が横っ腹を軽くどつくと大げさに痛がるところに大阪人の血を感じる。
こういうの、高校の頃から変わらない。
朱莉と久しぶりに会っても、きっとあの頃と同じような空気が流れるのだろう。
それでいて少しずつ関係は変わっていくのだ
気付いているのかな、気づかないかな。
香菜、どんな顔で朱莉に会うのだろう。
里奈の想像する中では、あの頃と同じような甘酸っぱい気持ちを浮かべて笑いあっている。
同じで違う。
違って同じ。
もっと大人になっても、それは変わらないよ。
忘れるような距離にはいない。
里奈は、あの頃の香菜にそっと答えを返した。

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白だったりクロだったり。310は名字から取ってます。
好きなものを好きなように、美しいものを美しく、美しいものを醜く、醜いものを醜く、醜いものを美しく。
平凡なことを切り取っていけたらいいな。

2011年4月くらいからスマにハマりだす。
2014年現在スマヲタ。スマ小説が多いです。
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